福岡高等裁判所宮崎支部 昭和25年(う)210号 判決 1950年9月25日
被告人
福満繁二
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役一年に処する。
但し、本裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。
原審及び当審における訴訟費用は、全部被告人の負担する。
理由
弁護人二見虎雄の控訴趣意第二点について。
弁護人は代理権と固有権とを有するが、代理権を行うには原則として本人の明示または黙示の意思に反することはできないのである。もつとも固有権に刑事訴訟法上特別の定めがあるときに限り、本人の意思にかかわらず、独立してこれを行使することが認められているところである。しかしながら、同法第三二六條第一項の場合は弁護人の固有権を規定したものと観ることはできないので、被告人と弁護人とが出頭しているときには、被告人の意思が弁護人の意思に優先すること勿論であるから、同條項の場合に弁護人は被告人の意思に反し、同意、不同意の意見を述べることは許されないものと解するのが相当である。さすれば、同條項の同意、不同意の意見を述べることは、弁護人の固有権であるとの前提のもとに、原審が、弁護人に対し、その意見を聴かなかつたのは訴訟手続に法令の違反があるとする論旨は理由がなく、採用することを得ない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)